どこの国でも規模や様態は異なれど、廃棄物の処理は大きな問題になっているようです。
廃棄物に関する最近のトピックとしては、極小のプラスチックゴミ、いわゆるマイクロプラスチックの拡散、
ゴミとは少し違いますが、微小粒子状物質などとも呼ばれるPM2.5による大気汚染問題などが挙げられます。
一方、ゴミにまつわる悪臭(異臭)をめぐっては、
現状、日本では産業廃棄物処理施設や不法投棄がらみの事案も散見されますが、
多くはいわゆるゴミ屋敷のような、一般家庭ゴミの範疇に収まっているように思えます。
カウナス・メカニカルバイオ廃棄物処理プラント(Kauno mechaninio biologinio atliekų apdorojimo gamyklos)という施設の近くに住む住人が、
当プラントの内部に立ち入って説明を聞いたとの記事(元のソースはこちら)が、リトアニアの新聞の電子版に載っていました。
アイキャッチの画像の中では、近所の住人と思われる20人くらいの人がみな鼻をつまみ、
中にはガスマスクといった物々しい風体をしている人もいて、何がなし異様な雰囲気が漂っています。
写真にはこのほかに、ペットボトルらしき廃物を固めたブロックや処理施設の内部、
敷地内の風景、施設の担当者の説明の様子が写っています。
記事には、カウナス近郊のラムチアイというところの住民から、
夜中に突然悪臭がして子供たちが咳き込んだ、アレルギーのような症状だった、
悪臭は深夜か早朝に発生する、風に運ばれて来るらしく、北風のときは感じないが、
南ないし南東の風のときに悪臭がする…
といった苦情があがり、処理施設に乗り込んで説明を受けたものの釈然とせず、
かえって疑念と不安が深まったとの文章が綴られています。
施設側からは住民に対し、処理施設内部では空気清浄機で悪臭を除いている。
ただし、ある種のバイオゴミの中には肥料化の過程で特殊な悪臭を出すものがあって、それは除くことができない。
また空気清浄機はアンモニアを分解しないが、フィルタで取り除いている。
今年の春、高さ35mの煙突を作って環境問題に対応している… といった説明がされたようです。
ラムチアイ(Ramučiai)はここ
当該施設は「カウナス地域廃棄物管理センター(Kauno regiono atliekų tvarkymo centras)」というところの付随施設らしく、
当センターのホームページに、この施設の稼働開始に関する記事が載っています。
アクセスのページの地図を見ると、確かにラムチアイの南東にあるようです。
ホームページには、受け入れ廃棄物の種類や料金についての説明もありました。
それによると、廃棄物の種類として木材、ガラス、紙、プラスチック、家電、タイヤなどがカテゴライズされており、
そのほかに有害な廃棄物として、蛍光灯や蓄電池、コンクリート、レンガなどが挙げられています。
日本ではゴミの分別については、自治体ごとに細かな違いはありますが、
可燃、不燃、資源の3つに大別され、収集しないとしているゴミもあるので、
その感覚でこのリストを眺めると、大雑把というのか、
紙とか家電とかリサイクルしないのだろうか、
タイヤやバッテリも引き取ってくれるのか、と意外な感に打たれます。
また、日本では一般ゴミと事業系ゴミが明確に区別されていますが、
ここの処理場の場合、個人の持ち込みもできるようです。
施設側の説明の中にもあった、バイオごみについては、
日本にもバイオに特化した廃棄物処理施設というものもあるようですが、
コンポストとして、自宅で肥料化できる装置がホームセンターなどで販売されていて、
においはするだろうけれども、咳き込むといった住人の苦情と、どうしても結びつかない。
昔は田舎に行くと、肥溜めからすさまじいにおいがしていましたが、
除臭の技術も進んでいるだろうし、それが原因とは考えにくいところがあります。
記事の最後には、
リトアニア国内に新たな焼却炉ができるらしい、
ゴミの処理によって生じた微粒子は広範囲に、時間をかけて蓄積するので、
子供たちや孫たちへの影響が心配だ、との、住民の声が載っていました。
臭いもそうですが、冒頭あげたマイクロプラスチックにしてもPM2.5にしても、
目に見えない、あるいは見えにくいものだけに、いっそう厄介な感があります。
かつては工場からの排気や排液が拡散して、いわゆる公害の原因になっていましたが、
現代は一般消費者の廃棄物が、新たな有害の種になっているのかもしれません。