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北の国々の暮らし情報、マスメディアの紹介、取材活動、調査結果のほか、周辺の出来事の雑多な記事を取り上げます

【カナダ】氷山がやってきた?

以前、北海道の流氷のことを書きましたが、リュウヒョウとはどういうものなのか、知らない人も多いと見えて、自分が見たことがあると話すと、氷が海の上を流れているんですか、と聞き返されることがよくあります。春先に、山の融雪が川を流れてゆく光景を思い浮かべているのかもしれません。

これに対し、氷山というものがあります。流氷とは、地球の寒帯地方でできた、海面上の氷が、低緯度の地域に流れて(押し出されて)くる現象のことですが、氷山とは氷河の末端が海に落ちて、山のような姿で海上を漂っているものを指します。流氷が、どちらかといえば平面的なのに対し、氷山は立体的であることがわかると思います。また流氷は、気温・水温といった気候条件がそろえば、比較的広い範囲で発生可能と思われますが、氷河の存在が必要条件である氷山が見られる場所は、かなり限定的といえます。

子供のころ何かの本で、南極の氷山はテーブル状で、北極の氷山は山の形をしている、と書かれていたのを読んだ覚えがあるのですが、山といっても高さはせいぜい数メートルから十数メートルくらいだろう、と思っていました。

最近ノルウェーの新聞の電子版を見ていたら、奇妙な写真が載っていました。北海道の道東地方にもありそうな、草木のない吹きっさらしの丘のふもとの、ありふれた海岸線の風景なのですが、その沖合いに白っぽいビルのようなものが2つ建っている。よおく見ると雪山、いや、氷の山です。ファンタジーアニメのイラストのようなたたずまいに唖然としてしまいました(記事はこちら)。

カナダ東部、ニューファンドランド島のフェリーランドというところに、高さが46mある巨大氷山がやってきたとのことで、そのスケールを話題にしているのかと思いきや、それを見物しに来る人たちの車で大渋滞が起きている、というタイトルになっています。元ネタは他紙からの引用のようで、こんなでかいのは見たことがない、という地元の人のコメントや、今年の発生は600個を越えている、地球温暖化の影響でグリーンランドの氷河からの分離が促進されている… という内容の本文に、氷山とは何ぞや、付近で起こったタイタニック号の沈没にまつわるコラムといった、周辺情報へのリンクがついています。


フェリーランドはここ(Google地図データより)

これくらい大きいと、氷とか浮遊物とかいった概念を越えて、島といったほうがふさわしいようなたたずまいですね。ボートで接岸して、アイスクライミングなど試みる人が出てきそうです。

(アイキャッチ画像はノルウェー紙「aftenposten」電子版より)

【ノルウェー】船舶用トンネル

山国である日本では、道路や鉄道にトンネルがあるのはさして珍しい風景ではありませんが、基本平坦な大陸国はどうでしょうか。

ヨーロッパは、一見すると平原が広がっているように見えますが、アルプスほどではなくてもそこそこに山地があり、その付近の交通路には、日本と同様、橋梁やトンネルがあると思われます。アルプスといえば、先日世界最長の鉄道トンネルが開通した、という報道がありましたね。

地図を見てみると、北欧のスカンジナビア半島は中央部に山脈が走っていて、とくにその北西部に延びるノルウェーは、フィヨルド地形に象徴される複雑な海岸線もあって、交通路の状況は想像に難くありません。

ノルウェーには、延長が24kmに及ぶという世界最長の道路トンネルがあるそうで、ネット上で調べてみると、盛り場のネオンを思わせるような怪しげな照明が続く、トンネル内部の写真にいくつか出会えます。その割に路面は片側一車線、素掘りらしい側壁があったりして、意外というのか、内部状況はなかなかワイルドです。

笹子トンネルや関越トンネルなど日本の、特に高速道路のトンネルでは、出入り口にトンネル名が大きく書かれていたり、管理用の施設が建てられていたり、内部の交通状況や出口の先の天候・道路情報を知らせる電光掲示板などが設置されていたりしますが、この道路トンネルの出入り口の周辺には、世界最長をアピールするものがまるで見当たりません。関越トンネルというより、国道17号の三国トンネルや二居トンネルのような、ごくありふれたローカルトンネルの印象があります。

しかし全長24kmですからね、時速60km(分速1km)で走り続けたとしても、20分以上かかる計算です。関越トンネルでもアクアトンネルでも延々と地下の中を走っていると退屈してくるので、実際に走るとどうなるんだろう、と心配してしまいますが…

そのノルウェーが、今度は船舶用の航路?トンネルを作るという記事を見ました。

記事自体は例によって、建設の計画と完成後の予想交通量工事の開始時期などを淡々とつづっているだけなので、別のネット情報を見てみました。それによると船舶用トンネルの規模は全長1,700m、高さ49m、幅36m。中央道の下り線小仏トンネルが全長約1,600mなので、長さ的にはそこそこかと。

昔、マイティジャックという特撮番組があり、秘密基地の地下ドックに格納している潜水艦?を発進させるために、ドック内に水を流入させ、満水状態にするオープニングシーンに感動した記憶があるのですが、トンネル内を大型客船が航行する想像図を見ていて、ふとその場面を思い出しました。勇壮な主題歌を頭の中で響かせながら…

(アイキャッチ画像はNCA(ノルウェー沿岸管理局)のホームページより)

【アラスカ】アメリカに売却された日

帝政ロシアがアメリカ合衆国にアラスカを売却した1867年から、今年は150年めにあたります。地元の新聞が、アラスカの購入に関する条約の調印が行われた3月30日に、そのいきさつや今日的意義を書いています(記事はこちら)。

ロシアが支配地を放棄するにいたった背景とアメリカが購入した理由、当時の両国内での評判などが書かれていますが、気候変動による温暖化が北極に及ぼしつある影響、およびその状況を反映しているかのような、ロシア・アルハンゲリスクでの国際フォーラムでの人々の発言を取り上げているあたりに、今日的課題を感じます。

ロシア、アメリカの双方が、こうした極地帯の領有と開発の歴史を通じて、先住民の存在を軽視してきたと反省している、というのが、タイトルにある second thoughts なのかな、とも思うのですが、こうした視点に、ローカル紙らしさが見えるような気もします。

 

【ラトヴィア】オーロラが見える?

ラトヴィアでオーロラが見えるのでしょうか?

リガの近辺で撮影したという、オーロラの写真や動画がSNSに投稿されているそうです(新聞記事はこちら)。

オーロラは磁極付近の上空で発生する、大気の発光現象です。北半球では、北緯60~70度付近で観測されることが多いようです。地球は球体なので、発生地域から遠ざかるにつれて、天空上の位置が低くなり、やがて地平線の陰に隠れてしまいますが、まれに北海道あたりでも見えることがあるそうです。

リガは北緯57度くらいなので、北海道よりは高緯度ですが、オーロラツアーのメッカとも言うべき、カナダのイエローナイフやフィンランドのラップ地方に比べればずっと南です。本当にオーロラなのかなあ、見えたとしてもショボいものじゃないのかなあ、などと疑ってしまいましたが、画像を見てみると、なかなかそれっぽいものが写っています。

冬の夜空は星がきれいですが、たまにでもこうした天空のショーが見られると思うとわくわくしますね。

 

【リトアニア】独立回復の日

3月11日というと、あの地震のあった日を思い出してしまうのですが、リトアニアでは独立の回復を祝う日となっています。1990年3月11日に、独立国として主権を回復する、との宣言が議会で議決されたことを記念しているのです。

バルト三国は、第一次大戦のあと、ロシアの支配からいったん独立を達成したのですが、その後独ソ間の秘密協定や、第二次大戦時の占領によってソ連に併合されました。80年代末の民主化運動を背景に、独立を回復したのはよく知られたとおりです。

国の誕生日を記念する日の認識については、バルト三国で微妙な違いがあります。

ロシアからの独立と、20世紀末の独立回復を国家イベントとして、祝日制定している点は同じですが、その重み付けに国柄というのか、歴史認識が反映されているように思えます。

リトアニアの場合、この2つに加えて、13世紀のリトアニア王国の成立にまつわる建国記念日があります。そのため、第一次大戦後のロシアからの独立は国家の再建ととらえられています。

ラトヴィアでは、1990年の独立回復の記念日はあくまで宣言が行われた日との認識であり、もうひとつの日が独立記念日とされています。リトアニアの記念日を伝える記事も、この祝日の歴史的意味やヴィリニュスで催されたイベントの様子を淡々と報じているだけのように読めます。

エストニアでも、独立記念日があるのはラトヴィアと同じですが、独立回復の祝日はリトアニア同様独立回復の日ととらえているようです。

ロシアの支配を脱した記念日は三国異なれど、来る2018年は同じくそれから100周年を迎えるわけで、それぞれのセレモニーに国のアイデンティティが示されるのでしょう。

 

【リトアニア】カウナスの新バスターミナル完成

改装していたカウナスのバスターミナルが完成したようで、いくつか写真が載っていました(記事はこちら)。

それによると、新ターミナルには21のプラットフォームがあり、従来の対面型の切符売り場に加えて、リトアニアでは初めて切符の販売機を設置。また、遠隔地からもアクセスができるそうです。200台収容の地下駐車場や、駐輪場が完備されている… などとあり、リトアニアだけでなく東欧地区で最も近代的なバスターミナルであると謳っています。

工事には900万ユーロを費やし、総面積は13,200平方メートル、一日当たり10,000人以上の利用があり、700を越える都市間、国際バス便があるそうです。

昨年開業した新宿のバスターミナルのオープン1ヶ月の利用者は、一日あたり約20,000人、便数は約1,200だそうで(国土交通省の資料による)、それと比べるとそこそこ健闘しているように見えます。別の資料では新宿のターミナルの敷地面積は1.47ヘクタール(=14,700平方メートル、ただし2階の人工地盤の面積だそうでバスの発着は3階と4階で行われていることを考慮する必要はあります)、停車場15バースとのことなので、かの地の規模感が推し量れます。

カウナスはヴィリニュスから鉄道で往復したことがあるのですが、バスで訪れたことはなく、バスターミナルがどこにあるのかも知りませんでした。丘と川に挟まれた小さな町だった記憶がありますが、それなりに人の往来があるのでしょう。

ポーランドのワルシャワから、バルト三国を経由してフィンランドのヘルシンキに達する高速鉄道の計画があるらしいのですが、バルト新幹線ともいうべきその新しい路線は、リトアニアの区間ではカウナスを経由するそうで、完成の暁には、さらに交通の要所としてのポジションを強化することになるのかもしれません。

【ラトヴィア】家系図作成サービス

日本でも家系の調査、あるいは家系図の作成を請け負うサービスがありますが、ラトヴィアでも同様の調査をしてくれるという記事です。

国立公文書館という、カチカチのお役所?が、70ユーロの調査費用で調べてくれるそうです。家族の姓、名前、出生届、婚姻届、死亡届といった、対象を特定する情報を提供する必要があります。期間的には6-12ヶ月、場合によってはそれ以上かかるとはいえ、1万円以内で引き受ける、というのは安い感じがします。

日本では家系図作成ソフトというのもあるようですが、サービスの場合は費用数万円からあるようで、片親のみ、両親、配偶者の家系も含める、などのヴァリエーションによって価格設定がされているケースが多いようです。多くのサービスは、明治時代の戸籍を調べることにより、200年くらいの過去であれば比較的容易に作成ができるようなことを謳っています。このほかにも家紋や寺の過去帳、古文書を調べるなど、探偵まがいの調査を行って、さらに古い先祖探しをするところもあるようです。ラトヴィアの場合はどこまでさかのぼることが可能なんだろう?

自分の先祖は誰なのか、どこから来たのか、といった思いは洋の東西を問わないと、記事を見たときは思いましたが、ラトヴィアの場合は、言語的にも民族的にも異なる周囲の大国のはざまで翻弄されてきた歴史があり、家系のとらえ方も知識的興味の側面が強い日本とは違って、アイデンティティが重視されているのではないか、家系図というより血統書のような意味合いがあるのではないかと、かの地の人たちの発想を考えてみました。

【ラトヴィア】森林墓地

まだまだ利用可能な土地が豊富な印象のあるラトヴィアですが、墓地の不足が危惧されているのは同じと見えて、「森林墓地」なるものを新たに作り、そのできばえを市議さんたちが視察にきた、との記事がありました。

記事によると、リガ郊外で新たに切り開いた土地に、1区画に4つの骨壷が収められる、2~5階建ての安置施設を11建てたそうです。区画は全部で288あり、この3月から納骨が可能になるとのこと。

現在の墓地需要のペースで行くと、あと10年か15年で墓地スペースがいっぱいになってしまう、との見積もりの上で、こうした事業が進められている、とありました。

日本でも、敷地の上に墓石を立てる、昔ながらの墓地の形ではなく、寺院の建物の一角にまるでロッカーのような外見をした墓地?を設置しているところがあります。一種の納骨堂なのだろうけれども、古い人間としては違和感を禁じえない。もっとも墓参や維持管理をする立場であれば、負担が少ないのは明らかなので、これも現代的な風景といえます。

記事の写真を見ると、ベンチや遊歩道もあって、高い木々に囲まれた森の中の墓地というより、明るく切り開かれた公園といった風情です。日本の場合、納骨スペースは室内にあることが多いようですが、ここは鳥小屋か養蜂のミツバチの箱のようなたたずまいをしています。ガラス窓が空を映し、氷をイメージしているようなオブジェにも北欧の香りを感じるのですが、出入り自由なのだろうか、壊されたり、いたずら書きなどされないだろうか、などと下世話なことを考えてしまいます…

かの地の埋葬事情はよく知りませんが、リガ市では毎年、7,000人の埋葬が行われるらしく、そのうち約10%の遺族が火葬を希望するそうです。言い換えれば埋葬の大多数は従来型の埋葬施設を必要とするわけで、このあたりにも日本の事情との違いがうかがえて、興味深いものがあります。

 

【極東シベリア】千島列島で命名された島

先日、ロシアが千島列島の無名島に名前をつけた、との報道がありました。

ユジノサハリンスクの新聞で、本件に関して3つの記事を見つけました。

一つ目は2月12日の地元の速報記事のようで、千島列島の5つの島に命名したとして、島名にしたらしい5人の名前を挙げています。ロシア地理協会サハリン支部というところが音頭をとって決めたそうです。

二つ目はモスクワの中央紙引用で、こちらは多少詳しく書いてあります。千島列島の地理的な説明に始まって、今回対象になった島々へのかかわりのいきさつ、命名された人のプロフィールなどが書いてあります。ただし、最初の地元速報記事とは、人名が少し異なっています。

三つ目は地元紙が、今回の命名に対して日本政府が抗議した、と伝えるものです。内閣官房長官が、外交ルートを通じて抗議した、と記者会見で述べた、と書いてあるだけ。

島の名前に割り当てた人とは、地元記事によると、デレビヤンコ、グロムイコ、ファルフトディノフ(Фархутдинов)、グネチコ、シェティニナの5人。中央紙のほうはカピッツァ、ファフルトディノフ(Фахрутдинов)、グネチコ、グロムイコ、シェティニナ、デレビヤンコの6人の名前を挙げていて、ちょっと訳し切れていないのですが、グロムイコとシェティニナは連名で名づけられたのかもしれません。

島の場所については、最初の3人の名前がつけられたのは、色丹島の近くである、と書いてあるだけ。グロムイコとシェティニナにまつわる島については、得撫島の北にある、と読めます。最後のデレビヤンコ島はアヌーチナ島の北東端、ペチャリヌイ岬の近くにある、とあります。アヌーチナ島とは、日本では秋勇留島と呼ばれている島です。面積は200平方メートルだそうで、15メートル四方くらいしかない?

カピッツァというのはロシアの物理学者、シェティニナさんは世界初の女性船長だそうで、オデッサからカムチャツカまで船を指揮してやってきたとのこと。ファルフト…って綴りが違っているのですが、この人はかつてのサハリン州の知事さんで、乗っていたヘリコプターが墜落して遭難した人です。グロムイコはソビエト時代の政治家。知事さんはともかく、ほかの人は千島とのつながりが読めない。

さて、あとの2人は第二次世界大戦の対日戦関係者です。グネチコはソビエトの軍人で、占守島の戦闘などを指揮して、千島の占領に当たった。デレビヤンコもソビエトの将軍で、日本の降伏文書の調印に際しては、東京湾上のミズーリ号の上で署名している写真が残っています。

でもデレビヤンコさんは、対日戦の現場で実際にドンパチしたわけではないだろうし、まして千島とは無関係のはず。グネチコさんは確かに島伝いに南下してきましたが、得撫島で引き返し、南部千島は樺太からやってきた部隊が占領したはずです。

となるとこの命名は、歴史的な事跡に基づくというより、政治的なメッセージであるとしか見えない。先の地元紙には、地理協会の支部長さん?のコメントとして、1945年の日本の降伏によって、この島がロシア地図に登場した、その降伏調印にかかわったのがデレビヤンコ将軍だ、といった文章があり、今回の発表の意図がうかがい知れます。

 

【一般記事】海氷面積が最小を記録

アメリカの国立氷雪データセンターなるところが、世界の海氷面積が今年の1月と2月、観測史上最低になったと報じた、との科学読み物がありました。

それによると、今年1月の北極圏の海氷面積は1,338万平方キロメートルで、これまで最低であった、昨年よりもさらに26万平方キロ減少しているとのこと。日本の国土面積が37万平方キロなので、そのスケールがわかりますね。

記事によると、海氷の現象は北極だけでなく、北半球の2月が夏の終わり、3月が秋の始まりに当たる南半球でも、この時期、氷の融解があるので、このような記録を招いた、としています。

根拠がよくわからないのですが、海水面の上昇という点では、海氷の融解はそれほど危ないものではなく、むしろ南極やグリーンランドなどの、陸地の雪氷が溶け出すほうが危険である、としていて、海氷面積の減少は地球温暖化や気候変動に大きな影響を与える、と警告しています。

元ネタと思しき、研究所のサイトの記事を見つけました。極周りの気温の上昇に関して、記事の文章には間違いがあるようにも読めるのですが、自分の和訳能力の問題でしょうか。研究所のサイトのほうには北極海の海氷分布図が添えられていて、ちょっと離れた形でオホーツク海の流氷が北海道に達しているのが見えます。