オホーツク海側の町、紋別で、「流氷初日」を観測した、というニュースが入ってきました。「流氷初日」というのは、流氷を陸から肉眼で確認できたことをいうらしく、早速砕氷船が流氷帯に突っ込んでいく様子がとらえられています。
自分は冬によく北海道に出かけていたので、紋別を始め、網走や小清水、標津などで流氷を見ました(ちなみに、アイキャッチの写真は、網走の東の北浜駅から北東方向を写したものです。ノロッコ号ってもう走ってないんでしたっけ?)。
しかしこの現象を見たことのない人には、「流氷」というのがどういうものなのか、見当もつかない人が多く、自分が流氷を見たことがある、というと、海の上を氷が流れているんですか、などと聞いてくる。
今回の報道では、ポテトチップみたいな形をした丸い氷が、クラゲの大群みたいに漂っていて、その中をかき分けて船が進んでいます。この程度であれば、まだ海水が見えていて、氷が流れている、という表現も当たっていると思います。
でも自分が最初に体験した流氷の風景はこんなものではありませんでした。
まだ紋別に鉄道が走っていた昔、列車待ちの時間を利用して、裏手の丘にある公園に上がりました。2月で街中も公園の中の坂道も雪が積もっていて、滑らないように非常な注意を持って歩いていくと、てっぺんに展望台のような建物がありました。その屋上から海の方向を眺めた自分は、思わず息を呑みました。
海には違いないが、普段見ている青というのか緑というのか、あの暗い色の代わりに、真っ白の雪原が広がっている。雪をかぶった紋別の町は麓に横に伸びていて、その先に平坦で、人工物がひとつもない、純白の新大陸がどこまでもどこまでも、まるでシベリアか、北極海のほとりにでもいるかのように続いていました。天気も快晴で、その真っ青な北の空と、真っ白に埋まった地表のコントラストは、今でも記憶に焼きついています。
なので自分には、流氷というと、広い海を埋めつくした白い氷原のたたずまいを連想してしまいます。砕氷船やアイスダイビング(氷の下に潜ってクリオネなどを観察する)などのアクティビティもいいですが、もし紋別に来て時間があれば、ぜひ山側の展望台に行ってみることをお勧めします。