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【極東シベリア】凍った路面での転倒

5月になると桜前線も上陸して、北海道にもようやく春がやってきます。
しかし天候が崩れて荒れ模様となることもあり、連休前に釧路で降雪があったようです。

さて、北海道よりもさらに北、シベリアにクラスノヤルスクという町があります。
そのクラスノヤルスクでも先日、時ならぬ雪が降ったと、地元の新聞の電子版が伝えていました。

シベリアの冬というと、日本に比べれば降雪量はともかく、寒さは半端ではないだろうと、まるで冷凍庫のようなイメージが浮かんできます。
自分は3月にシベリア鉄道でイルクーツクからモスクワまで旅したことがあるのですが、もう極寒の時期は過ぎたのか、思ったほどの寒さはありませんでした。
停車中にホームに降りた、クラスノヤルスクもノヴォシビルスクも、上空には冬の関東地方のような、抜けるような青空が広がっていました。

冬、北の国でやっかいなのは路面凍結です。
降った雨や解けた雪が凍って、路面がつるつるになるわけです。
こうした道を歩くときは、自分も気をつけているのですが、それでもつるっと転倒することがあります。
なるべく低速で歩き、重心を下げて、転んでも大事に至らないようにしていますが、横断歩道で滑ったときなど、みっともなくて仕方ない…

同じ新聞が以前、人が転倒して救急車で運ばれた一件を載せていました。

クラスノヤルスク市内の公園の近くの路上で、女の子が転倒して、縁石で頭を打ったらしい。
通りがかりの人が、下にダンボールを敷いてやったり、断熱マットのようなものを買ってきてくれたりしたおかげで、凍らずに済んだ…
とあるので、彼女は意識を失っていたか、自分では立ち上がれない状態だったのでしょう。
路上に横になること30分ほど、ようやく救急車が到着。
やってきた医師は診察もせず、彼女を車内に担ぎこんでしまった、とても不思議な感じがした…
と、この一件の始終をSNSに書き込んだジャーナリストが感想を述べて、短い記事は終わっています。

雪国の路上転倒など日常茶飯事であろうし、いくら救急車が登場したといっても、命には別状なかったようなので、どうしてそんなことがニュースになるのか、と最初思いましたが、日常茶飯事であるから事務的で機械的になるお役所の対応と、日常茶飯事であるからこそ、凍ってしまわないように温める、北国に住む市井の人々の助け合いのようなものが対比されているようで、興味深く感じられました。

【アイルランド】ホームレスデモ

人の身のまわりの衣食住は、社会で生きていくうえで大切な事柄ですが、中でも住まいの確保は重要です。
雨風や寒暖など、外界の自然環境から身を護る、食事をする、安心して眠る、くつろぐ場所としての家屋のあり方は、その人の人生観にも深く影響を与えていると思います。

アイルランドのダブリンで、いわゆるホームレスのデモがあったそうです。
この「ホームレス」という言葉、てっきり和製英語なのかと思っていましたが、れっきとした英語であるようで、文中でもしっかり homeless と表記されています。
記事によると、数千の市民が住宅問題の解決や学生寮の充実を要求して市内を行進し、終点で主催者側から何人かが演説した模様。

行進の様子や演説内容の詳細は省きますが、文中、いくつかの固有名詞や数字が出てくるので、確認してみます。

行進を主催したのは National Homeless and Housing Coalition なる団体だそうで、SNSなどで情報を流しているようですが、その活動や話題を扱った報道を、自分はまだ見出していません。

the Garden of Remembrance をスタートして、O’ Connel Bridge まで1時間強、デモ行進した、とあります。
以下のダブリンの地図で確認しますと:

スタート地点の the Garden of Remembrance は、祖国のために命をささげた愛国者を記念した公園です。
O’ Connel Bridge は、その南南東にある橋で、あいだの距離は2kmくらい。
東京でいえば、上野から浅草、渋谷から明治神宮といった距離感覚でしょうか。

演説の中に Jonathan Corrie なる人物が登場しています。
この人は4年前に、Leinster House と呼ばれる、アイルランド議会の議事堂の前の路上で死亡しているのが発見された、ご当地では有名なホームレスらしい。
演説者は、この伝説的なホームレスを引き合いに出して、”Garda stations” に寝ているものばかりがホームレスではない、と言い、議事堂の前で一生を終えた人への黙祷を呼びかけています。

この “Garda stations” ですが、”Garda” というのはアイルランドの警察機構のことで、警察官をそう呼ぶこともあるそうです。
組織の詳細や実態がよくわからないのでなんともいえませんが、”Garda stations”は、派出所ないしは警察署のような、職員の常駐・待機施設なのでしょう。
少なくとも “Garda” という名前の駅に泊まっている、のではありません…
日本の警察はどうなのか知りませんが、交番に一宿一飯をお願いして、全国を旅しているつわものもいるようなので、住処を失った人たちを保護することもあるのかもしれません。

Department of Housing, Planning and Local Government (住宅計画地方自治省?)によれば、9,724人が公設の一時施設(State-funded emergency accomodation)に身を寄せているとあります。
また別の報告として、ホームレスのうち、約8%は学生であるという、ちょっと意外な数字がありました。

これらがどこからの引用なのか、記事には詳しくは書いてありません。
調べてみたところ、同政府機関のサイトに、ホームレスの年次調査結果が載っていました。
その中で “Homelessness Report April 2019” によれば、18歳以上のホームレスは全国で6,584人(ダブリン市は4,401人)、うち男性が3,884人、女性が2,700人(ダブリン市はそれぞれ2,538人、1,863人)、18歳から24歳までが903人、25歳から44歳までが3,896人、45歳から64歳までが1,651人、65歳以上が134人となっています(ダブリン市はそれぞれ582人、2,647人、1,105人、67人)。
ただしこの6,584人の大多数は緊急避難施設や一時避難所などに身を寄せていて、支援の手のまわらないところで暮らしている人はほんのわずかということになっています。
また、高齢者層よりも、働き盛りの年齢層の割合が多い点、女性の比率がそれなりに高い点も興味深いところです。

日本では、厚生労働省がおこなった「ホームレスの実態に関する全国調査」があります(調査結果はこちら)。
平成30年1月の調査では、ホームレスは全国で4,977人、うち男性が4,607人、女性が177人(このほか不明が193人)いるとされています。
ただし、この調査は、公園や地下通路、橋の下などで、テントやダンボールでこしらえた寝床で暮らす、いわゆる路上生活者を対象としていて、インターネット喫茶などを泊まり歩いている、いわゆるネットカフェ難民などの、ホームレス状態が顕在化していない人たちが含まれておらず、実態把握には不完全であるとの批判があります。

日本でホームレスといえば、どちらかといえば貧困や失業などによる、困窮の象徴の感がありますが、かの地では住宅問題として捉えているように思えます。
文面や写真などで推測する限りでは、地震や洪水などの災害で住む家を失い、避難生活を余儀なくされている被災者の姿が重なります。

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【ラトヴィア】デカウサギ特集

犬は狩猟用や牧畜の管理用、あるいは警備用と、もともとは家畜として飼われていたわけですが、近年は愛玩動物、すなわちペットとして飼われているケースが大半と思われます。
こうした愛玩動物に対しては、親から生まれた個体を育てていくという飼育だけにとどまらず、品種を掛け合わせて新しい種類を作っていくといったこともよくおこなわれます。

ウサギももともとは家畜でしたが、欧州のほうではこのウサギを品種改良?して、体長70cmとか、体重7kgといった、大型の品種を作ることがおこなわれてきたようです。
ラトヴィアにそうした伝統?があったのかどうかは定かでないのですが、地元の新聞にウサギの特集記事がありました。

ベルギージャイアント、コーカサスジャイアント、ジャーマンビッグバタフライ、セントニコラスなどの品種ごとに、作られた年代、国、掛け合わせた品種、体長・体重・体格・毛並みの色などの説明があります。
大きなものになると、体長が65~72cm、体重は7kg以上に達するものもあるそうです。
ただし記事自体はこれらの説明文に終始していて、そうした品種が作られてきた背景や用途については触れていません。
他とは独立した記事のようで、何らかのイベントとの関連があるかどうかは不明ですが、保存や品種改良を目的とした団体や催しは、ご当地にもありそうです。

因幡の白兎の話があるように、日本列島にも古来から野生のウサギが住みついていました。
こうした在来種の系統や、どこからやってきたのかについてはよくわからないのですが、その中に日本白色種という白い品種があって、その大型の改良種の品評会が秋田県で催されているようです(案内の記事はこちら)。
リンク先のチラシを見てみると、イベントではこのほかに、日の丸鍋と称するウサギ鍋の試食や、デカウサギもとへジャンボウサギの販売も行われるそうです。

それにしても体重10kgのウサギって一体…

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【極東シベリア】国際猫ショー

サハリンのユジノサハリンスクで、国際猫ショー(Международная выставка кошек)なる催しが開かれたそうです。

主催したのは国際猫連盟(World Cat Federation:WCF)という、素人目にはうさんくさそうな?組織で、アヴァンタージ(Авантаж)という猫愛好家の団体が企画したものであるとのこと(WCFのサイトはこちら)。品種もさまざまな猫74匹が、青年の部・成人の部ならぬ青猫?の部・成猫?の部のそれぞれに出展し、モスクワやハバロフスク、エカテリンブルクから招待された専門家が評価したり、人気投票が行われたりしたようです。
出展した猫たちとは別にセールも行われて、気に入った子猫を選んだり、のちに譲ってもらうべく飼い主と交渉したりするシーンが見られたようでした。

品種としては、シベリアン、アビシニアン、スコットランド、カーラー、ベンガルとかいった名前が並んでいるのですが、門外漢にはさっぱりわからない…

ロシアには、猫をならして芸をさせる芝居小屋があるそうで、あのなつかない連中をあやつれる人たちというのは、どんな才能を持っているのだろう、と常々思っているのですが、こうした猫ファンの底辺のような場所におじゃまする機会があれば、そのあたりの秘密がわかるのかもしれません。

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【スウェーデン】ヘラジカが通行人を襲撃

日本でも山間部やふもとの集落で、野生の獣類に出会うことがあります。
シカやサル、キツネ、カモシカといったところですが、たいていの場合は相手が人間を恐れているので、すぐに逃げてしまいます。
が、中には逆に人間に立ち向かってくるものがあります。クマやイノシシが代表選手です。
時折仕事で山に入った人が襲われて怪我をした、というニュースを見聞きします。

スウェーデンのネット記事を見ていたら、パンダみたいに目の周りにあざができた人が写っていました。
犬を連れて散歩中に、突然現れたヘラジカに襲われて、顎を強打され歯を折られ顔に大怪我をしたとのこと。
この事件に前後してもう一人、やはり犬連れで歩いていたときにヘラジカに蹴倒され、肋骨を折られ肺に穴が開くほどの怪我をした被害者の話が載っています。

この記事は、リンク先のいくつかのサブ記事をまとめたもののようで、それらを読んでいくと、事件のあったのはイェーテボリ(Göteborg)近郊のリンドーメ(Lindome)というところで、2つの事件のあと、警察から要請を受けた地元の猟師によって、ヘラジカが一頭射殺されたそうです。
ただし記事を読むと、バスの待合室にのこのこと入ってきたヘラジカを、恐れた人間が撃ち殺したようで、これが二人を襲ったヘラジカなのかは確かでありません。

確か日本でも、北アルプスの乗鞍岳の畳平で、バスターミナルに迷い込んだクマがパニック状態になって逃げ回り、ハンターによって待合室に追い込まれて始末されてしまった… といった事案があったような気がしましたが、こうしたカタストロフィに至る原因は動物側にあるのか、人間側にあるのか、よくわからなくなってきます。

ヘラジカというのは、北欧からシベリア、北米のカナダなどに分布する大型のシカです。
奈良公園のシカのように、大きな角を生やしているのですが、へらのような形をしているために、この名があるようです。

前述のヘラジカを倒した猟師の話として、この地方は果物がなるシーズンなので、それをお目当てにやってくるヘラジカと、人間が出会う機会が多くなっている、また人が連れている犬に、ヘラジカが神経質になっている、これが事件の背景ではないか、との推測を伝えています。

日本における獣害については、代表選手のクマ類による人身被害の実数が環境省のサイトに載っていました。
これによると毎年50名から100名くらい、多い年では150名ほどの被害者が発生していて、うち2~4名程度の死者も出ているようです。
クマ以外の動物による人的被害もあると思うのですが、資料を見出せていません。
その代わりではないですが、同じく環境省の調査結果として、その他獣類による農作物被害の文献を挙げておきます。こちらのトップはシカのようです。

シカというと人的被害というより、道路に飛び出してきて車と衝突するケースが多いように思いますが、
3ページの、農作物被害の円グラフから推察すれば、シカやイノシシ、サルによる、人への被害もあるのかもしれません。
10ページのグラフを見ると、クマ類による人身被害は年々増加傾向にあるようです。

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【チェコ】プラハ市の交通運賃割引制度

プラハ市ではこの10月から、学生と高齢者を対象とした運賃割引制度をスタートさせる、とのネットの記事がありました。

プラハ市民で60歳を超える人と、26歳までの学生は、一年1,280コルナのクーポンを購入できるというもので、このほかに1ヶ月130コルナ、3ヶ月360コルナのクーポンも用意されるそうです。
現在学生は10ヶ月で2,400コルナ、シニアは5ヶ月で1,100コルナのクーポンが買えるが、
この制度によって学生とシニアは年間60%以上、費用を抑えられるだろう、との関係者の声が載っています。

学生の場合、10ヶ月で2,400コルナということは、12ヶ月では2,400÷10×12=2,880コルナ。
これが1,280コルナになるのであるから、減少割合は(2,880-1,280)÷2,880=55.55…%。
シニアの場合は、5ヶ月で1,100コルナなので、12ヶ月では1,100÷5×12=2,640コルナ。
これが1,280コルナになるのであるから、減少割合は(2,640-1,280)÷2,640=51.51…%。
自分の計算では、お偉いさんが言うほどのコストダウンはなさそうなのですが、実際にはこれ以外に負担があるのでしょうか。

割引によって減少する収益の財源には、市の予算を充てるそうで、その額は2億800万コルナと見積もられているとのこと。

ちなみにチェコの通貨コルナ(CZK)は、10月30日現在、
1 CZK = 4.96 JPY ですので、1,280コルナは6,349円となります。
1ヶ月130コルナは645円、3ヶ月360コルナは1,786円です。
2億800万コルナは10億3112万2039円…

東京近郊であれば、1ヶ月645円の乗り放題切符なんて、2,3日で元が取れそうです。
しかもこのクーポンは列車、路面電車、バス、地下鉄とさまざまな交通機関で使えるようです。
現地の物価水準がわからないのでなんともいえませんが、これは相当の大盤振る舞いではないだろうか。
もっとも東京にも、70歳以上の都民を対象にした、
年間1,000円の負担でバスなどが乗り放題になるシルバーパスの制度(詳細はこちら)があるので、
行政施策としては珍しくないのかもしれませんが…

プラハ市の人口は約120万人で、日本でいえばさいたま市と同じくらいです。
さいたま市の平成30年度の一般会計の当初予算は約5,540億円ということで、
10億円程度の捻出は可能なのかもしれませんが、大丈夫なのでしょうか…

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【カナダ】見捨てられた町とビットコイン

近年、仮想通貨に関する話題をよく見聞きするようになりました。

仮想通貨というのは、円やドルなどと同じく、
物の価値の尺度として流通し、支払いの手段になるものです。
ただし硬貨や紙幣のような実体も、中央銀行のような管理者もなく、
分散したコンピュータネットワーク上に、情報として存在しています。

取引を記録した、台帳に相当するものは、ブロックチェーンと呼ばれています。
これも分散ネットワーク上に存在していて、
その正確な更新には大量の計算(つまりは手間やコスト)を必要とするために、
これに成功したものには報奨として、新たな仮想通貨が発行され渡されます。
この報奨の仕組みはマイニング(mining)と呼ばれ、
そのために更新作業を行う人をマイナー(miner)という…

というのが概要ですが、詳細は参考書その他の情報源に譲ります。

仮想通貨をめぐる話題には、技術としての仮想通貨と、
投機対象としての仮想通貨の2つがあるように思います。
仮想といっても通貨ですので、
売買のタイミングによって為替の差益、差損が発生します。
またマイニング時点の相場によっては、マイナーに莫大な金融資産が転がり込みます。
現在のところ、仮想通貨の相場変動が大きいため、
投機の熱が一段とエスカレートしているように感じています。

仮想通貨にはいくつかあるようですが、
代表格になっているのがビットコインです。

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先日、このビットコインに関する、アラスカの新聞記事を見ました。
日本の山の中にもありそうな、川をせき止めたダムの写真が載っています。
情報技術の先端を行くような仮想通貨と、
自然のほかには何もなさそうな山奥が、どう結びつくのだろう…

記事は少し長めなのですが、
かつて製紙業で栄えたものの、工場の閉鎖後急速に衰えた町に、
ビットコインマイナーがやってきて、
短期間の間に、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長したかと思うと、
今度は価格の暴落に苦しむ様子を、物語調で語っているものです。

舞台となっているのはカナダ西海岸、ブリティッシュコロンビア州の、
ヴァンクーバーの北西にある、Ocean Falls という町です。


Ocean Falls はここ(Google地図データより)

ノルウェーのフィヨルドばりの海岸線の中に、ぽつねんとある町のようで、
記事の文言を借りると、この町に通じる航路から眺められる人類の唯一の痕跡は、
“a single power line stretching out from the dam” なのだそうです。

調べてみたところ、20世紀の初頭に製紙工場が置かれ、
一時はブリティッシュコロンビア州で一番の生産量を誇っていたようですが、
コストが上昇して採算が取れなくなり、1970年代に工場は閉鎖されたとのこと。
記事によれば一時5,000人ほどあった人口が、100人を割り込んでしまった。

前述のとおり、マイニングには大量の計算が必要で、
計算環境の安定した稼動のために、大量の電力を必要としています。
Ocean Falls に電力を供給している送電系統は、カナダの電力ネットワークにつながっておらず、
それに目をつけたあるビットコインマイナーが、
格安の費用負担での、大量の電力使用を認めてもらったらしい。
かつての工場のフロアを借り受け、データセンターとしてマイニングを始めました。

進出当初のビットコインの価格は400ドルだったのが、昨年の12月には20,000ドルにまで高騰。
ビットコインマイナーは投資者に対し、
2018年の末には6メガワットを使用し、年間570万ドルをマイニングで獲得、
2021年までには30メガワットを使って17,500ビットコインをマイニングする、
と気炎を上げていたそうです。

先日の北海道の地震では、非常の発電対策として、
老朽化した発電所をいくつか急遽立ち上げて、急場をしのいだ場面がありましたが、
そのときの発電量は20~35万キロワットでした。
1,000キロワット=1メガワットですので、これは200~350メガワットに当たります。
あくまで参考値ですが、マイニングが使用する電力の大きさがわかると思います。

ところが今年(2018)にはいってから、ビットコインの価格が急落し、
設備の増強や株の上場を考えていたマイナーは大きな打撃を受けます。
電力使用量は1メガワットにも届かず、
目標値を当初の6メガワットから1.5メガワットに下方修正しました。

このビットコインマイナーは、転んでもタダでは起きない生粋のアントレプレナーらしく、
冷却ファンの代用に水冷システムを開発して売りにだそうだとか、
計算機が発生する熱で水を温めて、鮭の孵化場に送ろうだとか、
本業を補完するいろいろなビジネスアイディアを考えているようですが、
文明世界からははるかに離れた未開地でもあり、前途が見通せない状況にあるようです。

記事は、Ocean Falls にやってきたビットコインマイナーに対する、
住民の心境を紹介して終わっています。
本質的には、”the pure conversion of electricity into money” であるマイニングを、
懐疑的に見る人がいる一方で、
電気を使ってくれて、それで町がにぎわうならそれでいい、という人もいる。
いずれのコメントの裏にも、年寄りばかりになった町に誰か、
特に若い人がやってくることへの期待がにじんでいました。

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新聞記事によれば、マイニングに適する場所として、
寒冷で、十分な水力発電量があることを条件に挙げています。
以前は新彊ウィグル、内モンゴル、黒龍江省など、
中国の奥地が注目されていましたが、
現在は炭素排出などの問題から、北欧や北米にマイナーの関心が移っているそうです。

記事の写真や、Ocean Falls の地理・歴史を読むと、
自分にはどことなく、北海道のかつての炭田地帯や、
利用者が少なくなって廃止に追い込まれたローカル線の風景が思い出されてきます。
少子高齢化に伴う人口減少で、地方自治体の中には将来の存続を危ぶむところもあります。
こうしたマイナーのアイディアが、過疎化、限界集落対策のヒントになるのかも。

日本ではコストの面で難しいかもしれませんが、将来シベリアなどで、
こうした電気売り、エネルギー売りがビジネスになるのかもしれません。

ビットコインのブームがいつまで続くのかはわかりませんが、
見捨てられた町にとって救世主になるのでしょうか、
それともかつての製紙業のように、
大自然の中に突如として割り込んできて、
大騒ぎをした挙句、廃墟を残したまま去ってゆく…
といった歴史を再現して終わるのでしょうか…

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【アイルランド】水道料金をめぐる政治問題

かつて日本は「水と安全はタダだと思っている」と陰口をたたかれていた時代があったらしいです。安全についてはタダどころか、GDPの1%を超えるか超えないかの国防予算を組んでいるし、水も安定供給を維持するために当局はまめに上下水道施設のメンテナンスを行っていて、そのための負担を水道料金という形で受益者は払っているのですが。

ところでアイルランドは少し前まで、各家庭が水道料金を負担しない、EUで唯一の国だったそうです。「だった」と過去形にしていますが、実はこれが同国の政治問題になっていて、現在も多くの人たちが水道代を払っていないらしい。このあたりのいきさつを、ラトヴィアの新聞が伝えています。

全文はちょっと長いのですが、内容をかいつまんで書いて見ますと:

・EU加盟国は”Water Framework Directive(水道枠組み指令、WFD)”を尊重する義務を負っている。WFDとは主にEU域内の水質保全を目的とした枠組みである。水の汚染者(=使用者)が供給コストを支払うのが原則である。ただしアイルランドはWFD第9条によりその義務を免除されてきた。
・近年アイルランドでは「水」と「会計」にまつわる概念が整ってきたため、EU委員会はもはやアイルランドに免除条項は適用されないと考えた。ギリシャに端を発した欧州経済危機のときに、アイルランドが融資を認められた条件が、水道料金制度の導入であった。
・当初当局は、水道メータ導入家庭には1,000リットル当たり4.88ユーロ、メータのない家庭には年間大人一人当たり176ユーロ、大人の構成員が増えるごとに一人当たり102ユーロの料金体系を決めたが、市民から猛烈な反発と抗議を受け、契約者・期間限定の割引料金などを提示して妥協を図った。しかし抗議はその後も続いていて、2015年時点でも全家庭の36%、約50万人が支払いをしていない。
・議会側から代案が出されるとそれに対する抗議が起こる。水道代なしの慣習でやってきたのだからそれでいいのでは、と疑問を投げかける議員もいるが、政府はEUに対し、水道料金を導入すると約束しているので、もしこの方針を撤回するとなると裁判沙汰となり、一日に何百万ユーロもの罰金を払わなくてはならなくなるかもしれない…

誤訳があったらごめんなさい。
この中で出てくるWFD第9条ですが、自分が見る限り、アイルランドのアの字も出ていない(WFDの英語テキストはこちら)。見る人が見れば、これはアイルランドを指している、ということがわかるのかもしれませんが、門外漢の日本人としては深く追求せず、ここはこうなのだ、と思うことにしましょう。

もともとアイルランドでは、水道代というのは一般の税制度の中で徴収されていたそうです。日本でも賃貸住宅の中には、家賃に水道料金が含まれている物件もあるので、このあたり理解はしやすい。同じインフラでも、電気・ガス・電話といった近代的なライフラインに対して、水というのは神代の昔から住まいの近くにあったはずだから、合理的に扱えない側面があっても不思議ではないでしょう。

ところで、この料金体系は高いのか、安いのか? 東京の水と比較してみました(東京都水道局の料金早見表はこちら)。水道局のHPには人数別の1ヶ月あたりの平均使用水量が載っているので、家族3人(約20立方メートル)、5人(約30立方メートル)のケースでシミュレーションしてみます。

東京の上水道は呼び径(メータ口径)で価格が異なるのですが、一番大きな25mmですと、20立方メートルの場合1ヶ月当たり3,391円、下水道が1ヶ月当たり1,684円なので合計5,075円。30立方メートルの場合は1ヶ月当たり4,773円、下水道が1ヶ月当たり2,821円なので月額合計7,645円。

これに対しアイルランドは、メータつきの計算式では、1,000リットル=1立方メートルですから、1ヶ月の消費量20立方メートルでは4.88×20=97.6ユーロ(1ユーロ120円とすれば97.6×120=11,712円)。30立方メートルでは4.88×30=146.4ユーロ(同146.4×120=17,568円)。メータなしの、家族の構成員数で計算されるケースでは、大人3人のときは年額176ユーロ(一人目)+204(102×2;二人目と三人目)ユーロ=380ユーロとなり、月額にすると31.66…ユーロ(同3,800円)。大人5人のときは二人目以降が408(=102×4)ユーロなので合計584ユーロ、月額48.66…ユーロ(同5,840円)?

家族3人の1ヶ月料金が、メータつきでは100ユーロ近くで、メータなしが30ユーロちょっとなんて、3倍も違う!使用水量が東京とは違うのでしょうか。また、追加分の大人料金102ユーロの扱いについては、我ながら翻訳がちょっと怪しいので、アイルランド当局の料金表に当たるべきかもしれません。

水道代込みの税体系をどうするのか、記事に言及がないのでなんともいえませんが、このままでは税と水道料での2度払いになるようにも見えます。とすれば抗議のデモも不払いも理解できないことはありませんが、現地の反発の根っこはもっと深いようにも思えます。イギリスの離脱問題で揺れるEUですが、異なる文化や歴史を持つ国々をひとつにまとめる難しさを象徴する事案のひとつといえそうです。

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【チェコ】若者の飲酒喫煙に関する記事

がチェコの新聞に載っていたのですが、ここで報じられているのはアイスランドでの事例で、それがチェコとどう結びつくのか、文章を読んだ限りではわかりませんでした(記事はこちら)。

記事によると、90年代後半ころのアイスランドの若者の飲酒喫煙、薬物摂取の状況はヨーロッパでも最悪レベルだったとのこと。15,16歳の40%以上が習慣的に飲酒喫煙していて、17%は大麻の経験があるとする調査結果もあった。金曜の夜のレイキャビクは、荒れたティーンエージャが騒いで、危険な雰囲気に満ちていたそうです。

この事態に対して国を挙げての矯正プログラムを作成・実行したことにより、今ではこれら悪習慣はほぼ撲滅されたそうです。13~16歳の未成年者に対する夜間外出禁止令、20歳未満の若者への酒類販売と18歳未満へのタバコ販売の禁止といった政策のほか、学校の課外活動、特にスポーツへの参加に重点をおいた支援を行った結果、国のサッカーチームがヨーロッパの大会で上位の成績を残すまで成果が上がった。何よりもプログラムは家族の生活に目を向けていて、子供たちが両親と最良の時間を過ごせるようになったと結んでいます。

記事ではこのアイスランドの成功に触発された欧州プロジェクトに、17の国と35の都市が参加している… としていますが、その中にチェコも入っているのかどうかを明らかにしていません。文章中にはチェコのチェの字も出ていないのです。

アイスランドというのは、北海道よりやや広いくらいの面積に、32万人程度(2012年:旭川市と同じくらい)の人が暮らす島国です。若年層が荒れる風景というのは大都会のイメージがあって、原始的な自然景観が残る国とはどうも結び付けにくいのですが、どんな社会でもそれなりに、若い人たちへの扱いに大人が苦労する場面があるということなのでしょう。チェコも比較的のんびりした印象がありますが、同様の悩みがあって、それがこうした異国の成功例を記事にとりあげた背景なのかもしれません。

(アイキャッチ画像はチェコ紙「Týden」電子版より)